2011/10/18関東ゼミ第4回住宅のエネルギー性能評価・温熱環境分析、事例発表&検討会~報告

今年最後の関東ゼミ無事終了いたしました。

自立循環型住宅研究会といえばこの事例発表なんです。

毎回この回だけは参加者数が少なくなってしまうのですが、やはり、設計物件の効果測定は永遠の研究テーマだと思いますので来年もやりますよ!

 

5名の方に事例発表いただきました。

森建築事務所・森健一郎さん「南北全面窓の自宅、住環境計算と実際の温湿度を分析」

カサボン住環境設計・(株)田村貴彦さん「今夏、自宅の温湿度測定に伴う数値化と体感について」

建築デザイン工房蓮家・工藤健志さん「完全遮熱の家、その実力はいかに?」

(有)やなぎたハウジング・柳田勲さん「中間ダクトを使用した換気システムの効果は?風量測定もやりました」

⑤(株)参創ハウテック・阿式さん「暑いわよ!クレームに対しての温熱環境改善提案について」

 

 

まずトップバッターは森さん。

川崎の自宅の測定です。

・南北に長くほぼ全面に開口を設け、東西にはほとんど開口がない

・Q値3.95W/㎡K、屋根16kGW100mm,壁16kGW100mm、基礎断熱、ペアガラスU値3.58W/㎡K。仕様規定的には次世代クリアだが、延べ床が20坪程度なのでどうしてもQ値としては悪くなってしまう。損失の60%弱が開口部のため、これを断熱窓+真空ペア+カーテン等交換するとQ値2.69W㎡Kになり、ギリギリ次世代クリアする

・エネルギー性能も90.78GJ標準に対して143.19GJの設計値でオーバーしている。悪さの原因は電気温水器と電熱式床暖。これをヒートポンプと高性能エアコンに変えるだけで66.24GJと大幅改善されることがわかった

・平均水温6月を基準にして温度上昇率で給湯・暖房の使用状況を算出。シュミレーションほど使用していないことが判明

・8月14~15の測定結果。日中はほぼエアコン(4kw・2F)をつけていて、ON時1,2Fとも30℃55%、OFF時MAX33℃60%

小平の自邸(集合住宅4F)リノベを測定した田村さん。

・冒頭Forward to 1985 energy life運動の紹介

・自分も消費エネルギー50%OFFを達成すべく今夏はエアコンを使用せずに夏を過ごせるか!?チャレンジ

・グリーンファンを購入しこれで過ごした。消費電力量としては2.2kwエアコン1台はグリーンファンだと200台分!

・測定結果。東側は隣地障害が無い為日射がモロに入る。カーテン等で遮蔽をした。朝7時で32.8℃とこの日のMAXをつけたがそれ以上は上がらない。逆に夜間も3時で30℃少しあるのでさがらなさすぎ。夜間窓全開でグリーンファンをつければ、寝苦しいということはなかった。

・日中は3~4m/s風があり、逆に夜間は0~2m/sと弱いのが原因かも。室温の割に湿度が夜間高いのも何かあるかも

・Q値2.08W/㎡K、単パンガラスの割に良い結果。集合住宅で両隣もあるためか

・感想として32℃までならエアコンなしで過ごせる!しかしそれを越えるとキツイ。ONの目安は温度33℃、湿度70%あたりか

 

 

工藤さんは栃木県矢板市の設計物件を紹介。

・全面遮熱シートを外張のみした。基礎はウレタン吹きつけ、窓は断熱LOW-Eペアガラス遮熱材の為Q値測定できず

・比較物件として施工会社ハッピーハウジングの宇都宮市事務所が同じような設計条件の為測定

・10月8~9日二日間。外気温が最高20.7℃、1,2Fとも19.5・18.3℃と20℃越えず、比較の方は外気最高21.5℃に対し2Fでは26.8℃と外気温よりも高い値。遮熱の効果は完全にある!

・遮熱の効果しかないと仮定すれば外気温が下がれば同じ勾配で下がるはずが下がり始めた16時~翌朝6時で3℃くらいしか下がっていない。となると、これは断熱効果もあるのではないか?

・冬の温湿度も重要なので測定して行きたい

 

栃木県真岡市の物件を紹介した柳田さん。

・Q値1.5w/㎡K、C値0.4という高気密高断熱。

・ここに市販の中間ダクトを採用し、冬場の暖かい空気を床下に強制的にまわし、家の外周10箇所以上付けた床ガラリから吹き出させる試みをした

・風量も測定してほぼ全箇所0.5~0.6m/Sで吹き出していることが判明

・夏の温度考察。エアコンは自動運転で30℃を超える日がなかった。天井と床の温度はほぼ一定⇒狙い通り中間ダクトが機能していると思う。朝方6時頃温度上昇がある、これは東側の日射がよく入る立地の為、逆に南はほとんど入らない

・冬の温度考察。LDKの温度上昇と合わせて玄関も同じく上がっている⇒中間ダクト効果!無暖房時でも15℃を下回ることはない

オオトリはゼミスタッフの阿式さん。

・設計者が施主指定の方が入ったので温熱的な配慮が少ない。故に「暑いわよ」との声に改善策を提案した

・提案する前に事前に現状認識の為、設計時のμ値や温湿度を測定。

・μ値0.11と確かに日射取得は多い、実際エアコンをつけていても30℃越えの日がほとんど

・南面にひさしと全窓に内付けブラインドをやるだけでμ値0.06にまで改善されることが判明

・ミスナール体感温度でも3℃以上の改善がみられる為、この方式でどうかと提案

・提案通り改善してくれたが工事は別会社。。。来年の夏の測定が楽しみ

 

5チームに分かれ物件のワークショップ

その後各班で代表者による議論内容の発表があり、無事終了しました

 

来年のゼミでは1年間を通して勉強と実測と考察が連動できるようなプログラムを考えますので是非来年も自立循環型住宅研究会と関東ゼミにご期待下さい!!